再配達のない生活インフラを整備しよう
宅配サービスで、家庭に配送しても留守のために出直す再配達問題が深刻化している。人手不足にもかかわらず膨大な労働力が無駄になっている。二酸化炭素(CO2)の排出増や交通渋滞の悪化など影響は広範囲におよぶ。
宅配会社と住宅、不動産、通販の企業、地方自治体が知恵を出し合い、1回で配達を終えられる生活インフラを築くべきだ。
国土交通省によると、今年4月の宅配便の再配達率は約15%だった。2015年時点の数字だが、再配達に年間9万人分の労働力が使われ、CO2の排出量の増加は年42万トンにのぼる。
インターネット通販の拡大で、荷物の数は確実に増加の一途をたどる。共働きや単身世帯も増えており、再配達の問題が解消しなければ宅配サービスの維持が難しい状況になりかねない。
まずは、戸建てや共同住宅に郵便ポストと同じように、不在時でも荷物を受け取れる宅配ボックスを備えることだ。マンションの共用設備はすぐに満杯になる場合が多い。三菱地所の子会社は各戸の玄関前に専用ボックスを設けたマンションを開発した。再配達を確実に減らすには、マンション全戸への設置を考えてもよい。
共働きの割合が高い福井県あわら市と学生が多い京都市の取り組みが参考になる。日中に不在が目立つ両市は、パナソニックなどと共同で住宅に宅配ボックスを設置する実験をした。あわら市では再配達率が4カ月で5割から1割以下に激減し、223時間分の労働時間の削減につながった。
受け取る側も配送時間に合わせて帰宅するなどのストレスから解放されたという。他の自治体も取り入れてはどうか。
自宅以外で荷物を受け取れる場所を充実させるのも有効だ。国交省は宅配ボックスのスペースを容積率に算入しないことにした。オフィスビルや病院がボックスを設置しやすくなる。
受け取る人が再配達のコストを負担すべきだという意見もある。だが、他人から届いた荷物の追加費用を誰が払うのかは調整が必要だ。宅配会社や通販会社が自宅やコンビニエンスストアなどで1回で受け取った人にポイントを与えるなど、インセンティブが働く仕組みもひとつの考えだ。
働き方改革が叫ばれる今こそ、再配達に伴う無駄と待ち時間を減らし効率的な社会につなげたい。