財政健全化へ正念場の来年度予算編成
財務省が2019年度予算への各省庁の概算要求を締め切り、年末の予算案づくりへの作業が本格的に始まる。19年10月には消費税率を10%に引き上げる予定で、政府の財政健全化に向けた取り組みは正念場を迎える。
7月に閣議了解した概算要求基準では歳出上限の設定を6年連続で見送った。この結果、要求総額は過去最大の102兆円台後半になる見通しだ。
北朝鮮対応など防衛力強化を目指す防衛省の予算要求額は過去最大になり、大阪北部地震、西日本豪雨など相次ぐ自然災害発生を受けて防災対策への予算要求も増えている。高齢化の進展で社会保障費は引き続き膨らんでおり、限られた財源のなかでいかにして歳出を効率化するかが問われる。
特に歳出の3分の1を占める社会保障費の伸びをどう抑え込むかが焦点だ。16~18年度の3年間は合計1.5兆円に伸びを抑制するという目安があったが、19年度以降の目安を政府は定めていない。来年度予算編成では社会保障費の効率化を進め、引き続き抑制する方針を明確にすべきだ。
団塊世代が75歳になり始める22年度以降は医療費など社会保障費が急増するとみられており、その前に高齢者に一段の負担を求める制度改革も課題になる。
政府は来年度当初予算案には消費税率引き上げに伴う需要の反動減への対策費も、通常の歳出とは別枠で盛り込む方針という。
前回14年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた際に、駆け込み需要とその反動減で増税後に消費などが落ち込んだ。政府はその反省から、来年10月以降の需要落ち込みを抑える対策をとる考えを示している。
増税後の反動減を心配するあまり、財政規律が大きく緩むようでは本末転倒だ。対策は企業の値上げが一斉にならないような工夫や、増税後の新商品投入など民間の努力を中心にして、財政支出に頼りすぎないことが重要だ。
政府は6月に従来は20年度としていた基礎的財政収支(PB)の黒字化目標を25年度に先送りした。目標は定めたが、その実現に向けた中期的な歳出・歳入についてしっかりした計画はない。
国民の将来不安を払拭するためにも、政府は持続可能な社会保障・財政への改革の見取り図を示すべきだ。来年度予算編成をその第一歩としたい。