スマートウエア着てみた 出歩くだけでポイント
奔流eビジネス (スクラムベンチャーズ マーケティングVP 三浦茜氏)
着るとポイントがたまる服。なんだか冗談のようだが、若年層向けファッションブランドである「トミー・ヒルフィガー」が、スマートチップを埋め込んだスマートウエアを発売した。服を選ぶ理由には色々あると思うが、TPOに合わせてでもなく、好きなデザインだからでもなく、ポイントがたまるからというのは、非常に斬新ではないだろうか。早速購入して着用してみた。
トミー・ジーンズ・エクスプローラーというラインで、スエットシャツ、シャツ、ジーンズ、キャップ、バッグなどが販売されている。筆者はスエットシャツを購入した。1980年代を意識したデザインで、正面に大きく「Tommy」と書いてある。特にトミーのファンでない身としては、着るのに少々ためらってしまった。
裾の部分に埋め込まれたチップが専用のスマートフォン(スマホ)アプリと連動して、アクティビティに応じてポイントがたまる。服を着て外出するとアクティブウェアポイントがたまる。アプリの地図に表示されるハートマークのチェックポイントに行くとポイントがたまる。ちょっとしたポケモンGOのようなものだ。
1日動きまわってたまったポイントは500ポイントほどだ。1万ポイントでファッションショーに参加したり、3800ポイントでオンラインでの買い物が25%割引きになったりする。一週間程度着ればオンラインでの買い物が25%割引きとなるという計算のため、好きなブランドの服であればなかなかお得な気もしてくる。
センサーや電池の小型化でスマートウエアは身近になりつつある。リーバイ・ストラウス(リーバイス)がグーグルと共同開発したスマホを操作できるデニムジャケットを販売したことも記憶に新しい。
こうしたなか、筆者が注目しているのは「スパイアヘルスタグ」という下着をスマートウエアにしてしまう薄型センサーだ。
縦5センチメートル、横3センチメートル、厚み6ミリメートルほどのセンサーで、アクティビティ、心拍数、睡眠、呼吸、ストレスレベルをモニターすることができる。1個50ドルで購入可能だが、15個のセットで300ドルで販売しており、持っているすべての下着に貼り付けることを推奨している。女性はブラジャーに、男性はパンツのウエスト部分に貼り付ける。
電池は1年半もつ。非常に強力なテープなので、洗濯や乾燥機にかけても大丈夫。このため貼り付けっぱなしで問題ないのである。実際にこのタグをつけた下着を洗濯乾燥機を使って洗っているが、壊れることなくアクティビティを計測し続けてくれている。
1日の行動を記録するアクティビティトラッカーは珍しくないが、このスパイアはつけ忘れることがない。筆者は複数のアクティビティトラッカーを利用していたが、つけ忘れて使わなくなることが多かった。
着用時に全く違和感がないとは言えないが、比較的肌になじむような素材を用いているのでそこまでの厚みは感じない。技術の進化によりさらに薄型化が進めば、市販のブラジャーやパンツに最初から組み込まれるという可能性もありそうだ。
ファッションもテクノロジーによりさらに進化しそうだ。服によってポイントがたまったり、スマホが操作できたり、アクティビティを計測できたり。思いもよらないような、新たな役割が生まれるのかもしれない。
[日経MJ2018年8月31日付]