多様な性に理解を深めよう
戸籍上は男性だが、自らの認識する性は女性。そんなトランスジェンダーの学生を2020年度から受け入れると、お茶の水女子大学が表明した。具体的なガイドラインをつくるという。
文部科学省は15年、小中高で性的少数者の児童・生徒にきめ細かく配慮するよう学校関係者に通知。日本学術会議も17年に提言をまとめた。多様な性のあり方を理解し、当事者の学ぶ権利を擁護する機運が高まるよう期待したい。
性には大きく、体の性(生物学的性)、心の性(性自認)、好きになる性(性的指向)がある。これらの組み合わせで人により様々な性がある。各人の個性で、差別されるいわれはない。社会でともに責任を分かち合い、個人としてその生き方が尊重されて当然だ。
だが、性的少数者への理解はまだ途上だ。いじめによる不登校、自傷や自殺未遂経験者の割合が高いという調査がある。発達段階に応じ、教育現場で正しい知識を学ぶ機会を設けること、ハラスメントの防止や、誰もが使いやすいトイレの整備など、課題は多い。
国際基督教大学は、性的少数者の学生の学籍簿の氏名・性別の変更や、健康診断、体育実技などへの対応をまとめたガイドを作成。早稲田大学も支援センターを開設し、全学生が受講可能な、性に関する講義も行う。
当事者が悩みを相談できる身近な大人は学校の教師だ。しかし、配慮を欠く対応をする事例も報告されている。大学の教員養成課程で、性的少数者への理解を深める講座を開設するのも一案だ。
自民党の杉田水脈衆院議員が、性的少数者のカップルについて、「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」などと月刊誌に寄稿した。明らかに誤った認識である。
電通の15年の調査は、人口の7%強が性的少数者と推計する。嘲笑をおそれ、身をすくめて暮らす隣人もいるはずだ。誰もが自分らしく過ごせる社会にどう変えるのか。私たち一人ひとりの課題だ。
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