難題多いパキスタン次期政権
7月25日のパキスタン総選挙でイムラン・カーン氏(65)ひきいるパキスタン正義運動(PTI)が第1党に躍進し、カーン氏が次期首相に就く見通しとなった。
軍政の時代を除いて、同国では長年パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PML-N)とパキスタン人民党(PPP)が政権を分け合ってきた。PTI政権の登場は歴史的な変化といえる。
一方で、PTI躍進の背景には軍の支援があった、との見方が強い。敗れたPML-Nからは「事実上の軍事クーデター」といった声も出ている。同国が直面する難題の山に適切に対処できるか、心配のタネは尽きない。
まず求められるのは政治に対する国民の信頼を回復することだ。PML-Nをひきいるシャリフ元首相は先月、汚職の罪で収監された。元首相に批判的な軍の意向による、と指摘する向きは多い。
選挙戦でカーン氏は汚職撲滅を主な公約に掲げたが、政治の透明性を高めるだけでなく司法の公正を促す努力も必要だろう。
経済面では膨らんだ対外債務が足元の深刻な問題だ。国際通貨基金(IMF)に頼らざるを得ないとの観測が出ているが、一帯一路構想の一環として急拡大した不透明な中国からの融資への返済にIMFの資金が回されるのでは、との疑念から米国は慎重だ。
米国の納得を得るには中国との取引の透明性を高める必要があるが、それには中国の反発が予想される。次期政権にとって経済運営は、対米・対中関係ともからむ難しいかじ取りになる。
対外政策ではインドとの関係も焦点だ。印パはともに事実上の核保有国。関係の緊張はアジア全域を脅かす。PML-N政権は対印関係の改善につとめたが、それが軍の不満を招いた面もあった。
対アフガニスタン政策も問われる。かねてパキスタン軍はアフガンの反政府勢力であるタリバンを支援してきた。多くの問題で次期政権が軍とどう向き合うか、注視していかなくてはならない。