企業の原材料やエネ調達 「持続可能」選別要件に
Earth新潮流 日経ESG編集部 藤田香氏
米スターバックスは7月、使い捨てのプラスチック製ストローの使用を2020年までに世界の全店舗で中止すると発表した。5月には、米マクドナルドが英国とベルギーの数店舗でプラスチック製ストローに代えて紙製ストローの試験的な導入を始めた。英国では紙製ストローを使う店を今後増やしていくという。
プラスチックは1例だが、原材料やエネルギーを環境や社会に配慮した持続可能なものに置き換える取り組みが企業の間で広がっている。マクドナルドは1月に「スケール・フォー・グッド」という方針を発表し、世界に3万7千店展開するスケール(規模)を利用して、環境や社会への配慮を進めると宣言した。
同方針に沿って25年までにパッケージをリユース素材かリサイクル素材、森林認証FSC(森林管理協議会)認証紙に切り替える。日本の2900店舗ではこの目標を先行して進めており、17年末時点で紙の71%をFSC認証紙に代えた。20年には100%を達成できる見込みだ。
マクドナルドは食材の持続可能性も追求する。世界の全店舗で「フィレオフィッシュ」の魚に、海の生態系に配慮して漁獲されたアラスカ産のMSC(海洋管理協議会)認証のスケソウダラを既に使用している。
フライドポテトやチキンナゲットの揚げ油は、持続可能なパーム油を証明するRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証の油を使用している。日本でも調達先の油ブレンドメーカーにRSPOの「サプライチェーン認証」の取得を要請しており「年内には達成される見込みだ」と、日本マクドナルドCSR部の岩井正人マネージャーは話す。
エネルギー調達でも持続可能なものに置き換える動きは進んでいる。米アップルは4月、43カ国にある同社の全施設を100%再生可能エネルギーで賄うことに成功したと発表した。加えて、同社のサプライヤーにも再生エネ100%での生産を求め、既に23社が約束したと公表した。
日本における再生エネ100%の達成は、新電力事業者の第二電力とパートナーシップ協定を結び、300カ所のビルや倉庫の屋上に太陽光発電を設置。1万8千メガワット時を発電して実現した。一方、サプライヤーの再生エネへの切り替えは、話し合いで共に進めた。日本の1次サプライヤー865社のうちエネルギー使用量の多い企業から1社ずつ丁寧に話し合い、自社内に再生エネ設備を造れるか、電力契約をどうするかなどを相談。再生エネへの切り替え計画や目標を詰めた。
米アップルには数十人から成るサプライヤー・レスポンスビリティ・チームがあり、サプライヤーの労働、人権、安全、環境面の配慮をチェックしている。問題があれば契約を解除するが、応えてくれるサプライヤーとは深く付き合い、強固なサプライチェーンを築いている。
このほか、最近は外食や小売りに納入する食品や油脂のメーカーが、納入先の要望を受けてRSPO認証パーム油を採用する例が相次いでいる。給食サービス業界では、企業の要請を受けて社員食堂向けに持続可能な水産物を提供する動きも始まった。
こうした動きの背景には、パリ協定などの国際ルールに加え、20年の東京五輪・パラリンピックが持続可能な原材料やエネルギーの調達を後押ししていることもある。ESG投資家も企業の環境や社会面の配慮を評価に盛り込み、投資判断に活用している。
サプライチェーンの「川下」の大企業が持続可能な調達を進めることで、原材料を納入する川上の中小企業にも環境・社会面の配慮が求められ、それが調達先選別の要件になる時代が到来している。
[日経産業新聞2018年8月3日付]
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