納税者に信頼される財務省に
通常国会が閉会し、中央官庁の人事異動が一段落した。この春以降、不祥事が重なり事務次官と国税庁長官の2つの重要ポストが空席という異例の体制がつづいていた財務省は、次官に岡本薫明主計局長が、長官には藤井健志同庁次長がそれぞれ昇格した。
2019年度予算の査定作業が夏休み明けに本格化する。また政権は来年10月に消費税率を10%に上げる。政策の円滑な実行には、税財政を立案し徴税を執行する財務省・国税庁が納税者の信頼を取り戻すことが不可欠である。
新次官を先頭に組織の規律回復に邁進(まいしん)してほしい。
佐川宣寿氏が国税庁長官を辞めたのは3月だ。森友学園への国有地売却に関する文書改ざんは、同氏が理財局長のときに起こった。長官就任後の佐川氏は記者会見を拒みつづけ、その後の国会での証人喚問は刑事訴追のおそれを理由に証言拒否を連発した。
各種世論調査の結果は、この問題が決着していないとみる人が多数いると教えている。説明責任を放棄したような振る舞いが納税者の不信を高めたのは間違いない。
また4月に福田淳一氏が次官を辞任したのは、女性記者へのセクシュアル・ハラスメント問題の表面化がきっかけだった。
福田、佐川両氏は官僚の本分である吏道を踏み外した。信頼回復への道は険しいが、新次官と長官が納税者に向き合う覚悟で説明責任を尽くすことが助けになろう。
そのために「官は過ちをおかさない」という無謬(むびゅう)原則を疑ってみることも必要ではないか。もっともこれは政策・事業を担う府省庁共通の課題である。
国の財政の窮迫度は一段と強まっている。財務官僚が自信なさげにしていては、立て直しはおぼつかない。消費税率10%後の道筋を立て、医療・介護などに費やす社会保障予算にメリハリをつけて膨張を抑える。時に首相官邸や与党と渡り合う場面もあろう。
規律を回復させ吏道を全うすることこそが、その大前提になる。