米国が招いたG7の機能不全
カナダで2日まで開かれた主要7カ国(G7)の財務相・中央銀行総裁会議が紛糾した。自国優先の保護貿易に突き進む米国と、これを一斉に非難する6カ国との対立があらわになった。
これではG7の枠組みが十分に機能せず、国際的な課題への対応に支障が出かねない。米トランプ政権が強硬な保護貿易を自制し、日本やカナダ、欧州との関係を正常化するのが先決だ。
米国は1日、日本や中国などに続き、欧州連合(EU)、カナダ、メキシコにも鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動した。これに対する批判がG7会議で噴出し、米国を名指しで糾弾する異例の議長声明をまとめた。
安全保障を名目に鉄とアルミの輸入に追加関税を課し、それを自動車にも広げようという米国に異を唱えるのは当然だ。同盟国や友好国にまで貿易戦争を仕掛けるトランプ政権の罪は重い。
米国は一方的な輸入制限を早急に撤回すべきだ。日本を含む相手国も世界貿易機関(WTO)への提訴などを通じ、米国の方向転換を促す必要がある。
世界経済は底堅い回復を維持しているが、貿易戦争の打撃を吸収できるほど強いとは言い難い。G7が通商問題でもめるあまり、米長期金利の上昇や南欧の政治不安といったリスクの点検をなおざりにしていいはずもない。
G7の亀裂が深まれば、既存の国際秩序に挑む中国やロシアの封じ込め、北朝鮮の非核化などにもマイナスになる。この状態を放置することはできない。
中国やインドなどの新興国が台頭し、G7の影響力が低下しているのは確かだ。米国第一を貫き、国際協調に背を向けるトランプ政権の下で、日米欧の結束を固めるのも難しくなりつつある。
しかし、G7が最低限の合意形成もできぬようでは、国際社会の統治に空白が生じかねない。G7が8~9日に開く首脳会議(シャルルボワ・サミット)では、緊張緩和の糸口を見つけてほしい。
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