貿易戦争の回避へ米中双方が自制せよ
米中両国が17~18日、貿易不均衡の是正に向けた2回目の協議をワシントンで開いた。中国が天然資源や農産物の輸入拡大などを米国に約束したものの、最終的な合意には至らなかった。
世界の二大経済大国による貿易戦争を、何としてでも回避しなければならない。米中両国は制裁や報復を控え、対話を通じて摩擦緩和の道を探るべきだ。
米国は貿易不均衡の拡大にいら立ち、より強硬な対中戦略に傾きつつある。鉄鋼やアルミニウムの輸入制限を中国にも発動し、中国の知的財産権侵害に照準を合わせた制裁の詰めも急ぐ。
これに対して中国が報復に動き、米国との緊張が高まった。国際的な通商ルールを無視する米国の罪が重いのは確かだが、やられたらやり返すと言わんばかりの中国の対応にも問題がある。
米中両国が3~4日に北京で開いた1回目の協議は、双方の要求をぶつけ合うだけで終わった。今回は中国が天然ガスや大豆、半導体の輸入拡大などを提示しており、わずかでも歩み寄りの兆しがみられるのは歓迎したい。
しかし根本的な利害の対立が解けたわけではない。米国がモノの対中貿易赤字(年間3750億ドル)を2020年までに2000億ドル削減するよう求めたのに対し、中国は明確な数値目標の受け入れを拒否したもようだ。
米国は中国が巨額の補助金でハイテク産業を育成する「中国製造2025」計画の撤回も要求しているが、折り合える余地はなかったとみられる。米国が中国通信機器大手の中興通訊(ZTE)に科した制裁も、中国の期待に反して緩和されていない。
何より重要なのは米国の自制だ。11月の中間選挙に向けた支持基盤固めを急ぎ、過激な保護貿易に走れば、米中のみならず世界の経済を縮小均衡に追い込む恐れがある。安全保障を名目に国や企業に安易な制裁を発動するのは、厳に慎まねばならない。
米中両国の貿易摩擦は、世界の覇権争いの一端でもある。双方が真摯な対話を重ね、決定的な衝突を避けるのが肝要だ。
日本や欧州は世界貿易機関(WTO)への提訴も含め、行き過ぎた制裁や報復を封じる必要がある。米国を除く11カ国の環太平洋経済連携協定(TPP11)の発効などを通じ、保護貿易に対する防波堤を固めるべきだ。