春秋
「ウミを出し切る」。首相の決意表明にもかかわらず、ウミの吹き出し口が増える一方である。この1週間だけでも、林芳正文部科学相が公用車でヨガに通っていたと報じられて謝罪し、防衛省では沖縄の米軍基地の移転を巡る警備企業の水増し請求が明らかになった。
▼公用車を私用に、といえば、総務政務官だった金子恵美衆院議員(当時)が子どもを保育園に送り迎えするのに使って物議をかもし、舛添要一都知事(同)が別荘への行き帰りに使って批判されたことを、すぐに思い出す。いずれもそんなに古い話ではない。教育行政のトップにいるはずの文科相の学習能力が心配になる。
▼より深刻なのは防衛省かもしれない。水増し請求の事実を把握したあとも、その企業との契約を続けていた。おまけに水増し請求の内部告発について企業側に伝えていたという。内部告発者を守るのではなく、危険にさらす行為である。いざというとき、防衛省はだれを、あるいは何を守ろうとするのか。疑念はつきない。
▼モリ、カケ、日報、セクハラ、暴言……。政治や行政に対する国民の信頼を揺るがす問題はとどまるところをしらない。何とも情けないのは、古傷の手当てが進まずウミが出続けているうちに、別の傷で新たなウミが出はじめていることだろう。「出し切る」というからには痛みを伴う切開手術も必要では、と思うのだが。