国民の信頼裏切る行政の失態どこまで
公文書の改ざんや隠蔽をめぐる不祥事が連日のように発覚している。森友、加計両学園や自衛隊の日報問題では隠した事実が次々に見つかるなど、行政への信頼を損ないかねない失態が続いている。政府は公務員全体のタガを締め直し、全省庁を通じた再発防止策の徹底を急ぐ必要がある。
森友学園への国有地売却は決裁文書の改ざんに続き、財務省理財局が学園側に口裏合わせを頼んでいた事実が明らかになった。8億円の値引きの根拠となった地中ごみに関して「撤去費用が相当かかった、トラック何千台も走った気がするという言い方をしてはどうか」と持ちかけていた。
陸上自衛隊の2004~06年のイラク派遣時の日報は、昨年3月に確認されてから1年以上も事実を公表しなかった。南スーダン国連平和維持活動(PKO)の日報の隠蔽や破棄で、昨年7月に稲田朋美防衛相ら幹部が辞任した教訓が生かされていない。
加計学園の獣医学部新設では、愛媛県がこれまで「ない」としていた計画に関する文書が見つかった。当時の柳瀬唯夫首相秘書官が県関係者と面会し「本件は首相案件」と述べたとの記載があるという。柳瀬氏は談話を発表して面会の記憶はないとし、一部報道を「ありえない」と否定した。
一連の混乱は2つの構造問題を浮かび上がらせる。まずは各省が行政判断の経緯を記録し、公開する基本ができていない点だ。防衛省・自衛隊の報告の遅れは、文民統制(シビリアンコントロール)にかかわる重大な問題だ。
もう一つは問題が生じた際の幹部公務員の対応の稚拙さだ。国会答弁に沿って文書を改ざんし、口裏を合わせようとする行為は、憲法15条が定める「全体の奉仕者」としての自覚が欠けている。
各府省庁は4月から新たな文書管理規則の運用を始めた。意思決定過程の検証に必要な行政文書の保存期間は「原則1年以上」に改めた。防衛省は日報の保存を1年未満などから「10年」に統一。安倍晋三首相は各省に決裁文書の電子化の徹底も指示した。
だが制度改正はなお不十分だ。公文書管理法に罰則規定を盛り込み、公文書の定義や保存のルールを政府内でそろえて徹底する必要がある。国立公文書館に資料調査や提出を指示する権限を与え、政府全体で情報の保全と管理を徹底する方法も有効だろう。