FRB資産縮小 来月開始 金融危機対応を完了
年内追加利上げ示唆
【ワシントン=河浪武史】米連邦準備理事会(FRB)は20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、2008年の金融危機後の量的緩和政策を完全に終結し、大幅に膨らんだ保有資産の縮小を始めると決めた。08~14年に購入した米国債などの保有量を、10月から段階的に減らす。米景気は拡大局面が続き、金融引き締めは15年末の利上げ開始に次ぐ新たな段階に入る。
20日のFOMCでは6月に続く利上げを見送り、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は年1.00~1.25%のまま据え置いた。ただ、同時に公表した金融政策見通しでは、FOMC参加者の多くが年内1回の追加利上げを予想。市場では12月の会合で再び利上げに踏み切るとの観測が急速に強まっている。
会合後に記者会見したイエレン議長は「米経済はハリケーンの影響で一時的に減速するが、今後数年にわたって緩やかな拡大が続く」と強調し、好調な景気を理由に資産縮小の開始に踏み切ったと説明した。ただ、物価上昇率は想定以上に鈍化しており「ミステリーだ。当面は物価動向を注視する」と追加利上げの是非を慎重に見極める姿勢ものぞかせた。
FRBは08年11月から14年10月までの量的緩和で、米国債や住宅ローン担保証券(MBS)を大量に買い入れ、保有資産量が9千億ドルから4.5兆ドルまで膨らんだ。14年の量的緩和終了後も資産量を維持し続けてきたが、今年10月からは満期を迎えた債券や証券への再投資を取りやめ、保有資産の圧縮を開始する。
FRBが米国債やMBSの保有量を減らせば金利に上昇圧力がかかり、市場には利上げとともに二重の金融引き締めとなる。市場への影響を少なくするため、10月から3カ月の縮小幅は米国債が月60億ドル、MBSなどは月40億ドルと小規模にとどめる。縮小幅は段階的に増やして1年後にはそれぞれ月300億ドル、月200億ドルとし、資産縮小の規模は最大で年6千億ドルとなる見込みだ。
FOMC後に公表した政策金利見通しでは、参加者16人(金融政策の投票メンバーは9人)のうち、12人が年末までに追加利上げを予測していることを明らかにした。FOMCは今年は3回の利上げを想定し、3月、6月と利上げに踏み切っている。ただ、市場では物価停滞などの影響で、年内の追加利上げを見送るとの予想が浮かんでいた。
FRBは利上げに続いて資産縮小に着手することで、政策運営を危機モードから平時体制に戻す。米景気は拡大局面が9年目に突入するなど底堅く、08年秋のリーマン・ショックから9年を経て、危機対応の完全脱却にたどり着いた。主要中央銀行では欧州中央銀行(ECB)も量的緩和の縮小を視野に入れ、英中銀も利上げ開始の可能性を示唆している。