投げて守れる ゴールボール(視覚障害)安達阿記子
強心臓のゴールゲッター
国際パラリンピック委員会(IPC)が今年初め、リオデジャネイロ・パラリンピックで注目すべきアスリートのリストを発表した。視覚障害者がプレーするゴールボール女子で取り上げられた世界の3人に、安達阿記子(リーフラス)は名を連ねた。
日本のパラ史上初めての団体競技金をとったロンドン・パラ決勝で、中国相手に決勝点を決めた。昨年11月の最終予選では、負ければリオ行きが絶たれた決勝で、これまた中国に対して決勝点を投げ込んだ。大舞台で無類の勝負強さを誇るゴールゲッター。「私はメンタルが強い。プレッシャーのかかる方が力を出せるタイプ」と力強い。
ゴールボールはバレーボールと同じコートで、両エンドに9メートル幅のゴールを設置。目隠しをした選手3人が、互いにバスケットボール大の鈴入りボールを投げ合い、体を投げ出して防ぎ合い、ゴール数を競う。体格の大きな海外の選手はパワフルな球を投げるが、守備は苦手というのが多い。だが、市川喬一ヘッドコーチは「投げて、動けて、守れてとすべてそろうのは珍しい」と安達に全幅の信頼を置く。
ロンドン大会以降、国際球が弾むタイプに替わり、バウンドさせて人の壁を越えようとする攻撃が主流となった。安達もバウンド系は投げるが、武器は地をはうグラウンダーとバウンド系の中間の球。
鈴の音を頼りに球の方向、弾み方を予測する守備では、この「どっちつかず」の球が、体を投げ出して防げばいいのか、少し立てて防げばいいのかの一瞬の迷いを引き出し、壁をすり抜けるのだ。「一番自信がある球。しっかり回転をかけてあてるべきところにあてれば相手ははじいてくれる」と強調する。
14歳で視覚障害になり、両目とも見ようとするところにモザイクがかかるような弱視に。電子オルガン奏者の夢をあきらめ、マッサージ師の資格をとろうと通った施設でゴールボールに出合う。
連覇を目指す立場だが、「ディフェンディング・チャンピオンとは思っていない。新たに世界の頂点を目指すという気持ちでいる」。再び、世界にその力を見せつける。
=敬称略
(摂待卓)