ルネサンス美術とプロパガンダ(3)松本典昭
公妃の威厳 際立つ肖像画 群青の鉄壁、美しく悲しく
一度目にしたら忘れられない肖像画である。超絶技巧によって外観のみが微細に描きこまれている。人を寄せつけない、内面をのぞかせない、その鉄壁の守りの冷ややかな美しさに、われわれは息をのむ。
背景に神聖な色
エレオノーラ・ディ・トレドはスペイン名門貴族の出身で、父は皇帝カール5世の重臣だったナポリ副王である。1539年に17歳でフィレンツェ公コジモ1世に嫁いでからは、毎年のように妊娠出産をくりかえし、1...