「推敲」難しいからこそ
阿辻哲次
唐の時代に賈島(かとう)(七七九~八四三年)という詩人がいた。筆が遅く、着想がなかなか形にならないことで知られていたが、ある時ちょっといい対句のフレーズが浮かんだ。それは、
鳥宿池辺樹 鳥は宿る 池辺の樹
僧推月下門 僧は推す 月下の門
というものだったが、しかし苦吟タイプの彼は、「推す」を「敲(たた)く」とした方がいいのではないかとも考えた。
「推す」も捨てがたいが、「敲く」には視覚的な効果の...
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